2024/07/31

建売住宅の耐震等級はどのくらい?注文住宅との違いや耐震性の調べ方も

建売住宅の耐震等級はどのくらい?注文住宅との違いや耐震性の調べ方も

この記事では、建売住宅の耐震等級はどのくらいなのか、注文住宅との違いも踏まえて解説します。

耐震等級とは、地震に対する建物の強さを評価する指標です。耐震等級の高い住宅を購入することで、地震が起きたときの倒壊リスクを抑え、不安を軽減できます。

この記事では、耐震等級の高い建売住宅の選ぶメリットやデメリットも解説します。地震に強い建売住宅を検討している人は、ぜひ最後までお読みください。

【この記事でわかること】

  • 建売住宅の耐震等級とは?
  • 建売住宅と注文住宅の耐震性の違い
  • 耐震等級の高い建売住宅を選択するメリット・デメリット
  • 耐震性の高い建売住宅を見極めるポイント
  • 建売住宅の耐震性の高さを調べる方法


建売住宅の耐震等級とは?

そもそも耐震等級とは、地震に対する建物の強さである耐震性を評価する指標のことです。

2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づいており、耐震等級は、等級1〜3の3段階に分けられます。

地震による被害を抑える方法として、耐震のほかに「制震」や「免震」があります。

ここでは、以下の3つについて詳しく解説します。

  • 耐震・制震・免震の違い
  • 耐震等級認定と相当の違い
  • 耐震等級の目安

順番に見ていきましょう。



耐震・制震・免震の違い

耐震は、建物自体の強さを高めて揺れに耐えようとすることです。壁に耐震壁を設置したり部品の接合部分を補強したりして、建物の強度を高めます。

制震は、衝撃を吸収する仕組みを建物に取り付けることで伝わる揺れを吸収し、建物の揺れやダメージを軽減することです。建物の内部にダンパーなどの制振装置を設置することで、地震の揺れを吸収します。

免震は、建物を基礎から浮き上がらせ、揺れが直接伝わりにくくすることで、建物の揺れやダメージを軽減することです。建物と地盤を切り離し、その間に免震装置を設置することで、地震のエネルギーを地面に受け流します。

耐震・制震・免震は、地震の揺れに対してどのように対応するのかという点で大きな違いがあるといえます。



耐震等級認定と相当の違い

耐震等級認定と相当の違いは、住宅性能評価機関に申請して認定を受けているかどうかです。

耐震等級の認定を受けるには、専門の第三者機関による審査が必要です。認定を受けることで、地震保険料の割引が受けられるなどのメリットがあります。

一方で「耐震等級○相当」という表記は、認定を受けていないが設計上は同等の耐震性能を持つことです。認定を受けるには費用がかかるため、コスト削減のために認定を受けない場合があります。



耐震等級の目安

耐震等級は主に3段階あり、それぞれ以下の特徴があります。

耐震等級建築基準法レベル特徴
等級1建築基準法と同レベルの耐震性● 数百年に一度程度発生する規模の地震による力に対して倒壊・崩壊しない

○ その後大規模な修繕が必要になる可能性が高い

● 数十年に一度程度発生する規模の地震による力に対して、損傷を生じない

等級2等級1で想定する地震力の1.25倍の地震力に対する強さ● 数百年に一度程度発生する規模の地震による力の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊しない

○ その後一部修繕すれば住み続けられる可能性が高い

● 数十年に一度程度発生する規模の地震による力の1.25倍の力に対して、損傷を生じない

等級3等級1で想定する地震力の1.5倍の地震力に対する強さ● 数百年に一度程度発生する規模の地震による力の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない

○ その後軽く修繕すれば住み続けられる可能性が高い

● 数十年に一度程度発生する規模の地震による力の1.5倍の力に対して、損傷を生じない

※参考:住宅性能表示制度かんたんガイド|一般社団法人 住宅性能評価・表示協会

東京都の場合、数百年に一度程度発生する規模の地震は震度6強〜7、数十年に一度程度発生する規模の地震は震度5強に相当する地震のことです。

耐震等級1でも震度6強〜7の地震でも倒壊しない耐震性はありますが、大規模な修繕が必要になる可能性が高いといえます。等級によって、余震が起こっても倒壊しないかどうかや、修繕がどの程度必要になるかは大きく異なります。



建売住宅と注文住宅の耐震性の違い

建売住宅と注文住宅の耐震性には基本的に大きな違いはありません。どちらも現行の建築基準法に基づいて設計されているため、耐震性能の基本的なレベルは同じです。

建売住宅の耐震性が以前よりも高まった理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 建築会社の施工品質が向上したから
  • 建築基準法に基づいているから
  • 住宅性能評価書があるから

順番に見ていきましょう。



建築会社の施工品質が向上したから

近年、建築会社の施工品質が向上したことが、建売住宅の耐震性が高まった理由の1つです。その背景が、2000年に施行された『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』です。

品確法以前は、住宅性能を表示する共通のルールがなく、購入する人が住宅を比較したり性能評価を安心して信頼することが困難でした。

品確法によって住宅の品質について明確な基準が設けられ、住宅の生産からアフターサービスまでの品質が担保されるようになりました。品確法の施行に伴って、建築会社の施工品質も向上したといえます。

※参考:住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要|国土交通省



建築基準法に基づいているから

注文住宅・建売住宅は原則、建築基準法に従って建築されています。建築基準法では、地震に対する建物の安全性を確保するための最低限の基準が定められています。

1981年に改正された新耐震基準は、震度6強から7程度の地震に対しても倒壊しないことが目的です。阪神淡路大震災の後の2000年にも耐震基準がさらに強化されているため、2000年以降に建築された建売住宅では一定の耐震性が確保されています。



住宅性能評価書があるから

建売住宅の多くは、住宅性能評価書を取得しています。住宅性能評価書とは、第三者機関が建物の耐震性能を評価し、認定するものです。

住宅性能評価書があることで、購入者は建物の耐震性を確認しやすくなります。

評価書を取得するためには建築物が厳しい耐震基準を満たしている必要があるため、結果として建売住宅の耐震性能が向上しました。



耐震等級の高い建売住宅を選択するメリット

ここでは、耐震等級の高い建売住宅を選択するメリットを紹介します。

  • 住宅ローンを低金利で組める
  • 地震保険料が安くなる
  • 各種税金が減税される
  • 将来売却しやすくなる
  • 震災時のリスクが低下する

順番に見ていきましょう。



住宅ローンを低金利で組める

耐震等級が高い建売住宅を選ぶことで、住宅ローンを低金利で組むことが可能です。多くの金融機関では、耐震等級が高い住宅に対して優遇金利を提供しています。

例えば、長期優良住宅などの「質の高い住宅」を購入する人向けにフラット35Sを提供しているのが、住宅金融支援機構です。

一般住宅を購入するフラット35と比較して 、借入金利を一定期間引き下げてくれます。数十万円から数百万円も返済額が減少するため、返済負担がかなり軽減されます。

低金利で組める理由は、耐震等級が高い住宅が地震に対して強く、リスクが低いと評価されるためです。金融機関は貸し倒れのリスクが低いと判断し、住宅購入者に低金利でのローンを提供します。

※参考:【フラット35】S:長期固定金利住宅ローン|住宅金融支援機構



地震保険料が安くなる

耐震等級が高い建売住宅を選ぶと、地震保険料が安くなるメリットもあります。

地震保険の料率は、住宅の耐震性能に応じて設定されており、耐震等級が高いほど保険料が割引されます。例えば、耐震等級1では保険料が10%割引、耐震等級2では30%割引、そして耐震等級3では50%割引されることが一般的です。

ただし、申請時に耐震等級を証明する書類を提出する場合も多く、第三者機関の認定を受けなければならないため注意が必要です。

※参考:損害保険Q&A – すまいの保険 – 問63 地震保険|日本損害保険協会



各種税金が減税される

耐震等級が高い住宅を購入することで、さまざまな税金の減税が受けられます。例えば、登録免許税や不動産取得税、固定資産税の減税などが適用される場合があります。

減税措置は、耐震性能が高い長期優良住宅が地震に強く、長期間にわたり安全であると評価されているためです。具体的な減税内容は地域や住宅の種類によって異なるため、購入前に確認することが大切です。

※参考:住宅:認定長期優良住宅に関する特例措置|国土交通省



将来売却しやすくなる

耐震等級が高い住宅は、将来的に売却しやすくなります。

中古住宅を購入する場合、特に耐震性を心配する人は多い傾向にあります。耐震等級認定を受けている住宅は新築時の耐震性が保証されているため、安心できるでしょう。

特に、耐震等級3の住宅は最も高い耐震性能を持つため、購入希望者にとって魅力的な物件です。そのため、耐震等級の高い住宅は、資産価値が高く維持されやすいメリットがあります



震災時のリスクが低下する

耐震等級が高い住宅は、震災時のリスクが低下します。耐震等級3の住宅は、震度7の地震にも耐えられる設計であり、地震による損害を最小限に抑えることが可能です。

居住者の安全が確保されるだけでなく、地震後の修理費用や生活の再建にかかるコストも抑えられます。

また、建売住宅は完成された状態で販売されるため、建物の構造を目で確認できず、不安を感じる人は一定数います。しかし、耐震等級が高い建売住宅は第三者の専門家が耐震性を確認しているため、震災時の心理的な不安も軽減されるでしょう。



耐震等級の高い建売住宅を選択するデメリット

ここでは、耐震等級の高い建売住宅を選択するデメリットを3つ紹介します。

  • 総費用が高くなりがち
  • 間取りの自由度が低い
  • 選択肢が限られる

順番に詳しく見ていきましょう。



総費用が高くなりがち

耐震等級が高い住宅は、一般的に建築コストが高くなります。

高い耐震等級を達成するためには、より強固な材料を使用したり、壁の厚さや柱の太さを大きくするために使用する材料が増えたりします。また、高度な施工技術も必要です。

そのため、建築費用が増加し、結果として販売価格も高くなる傾向があります。また、耐震等級の認定を受けるための手続きや審査にかかる費用が上乗せされることも要因の1つです。



間取りの自由度が低い

耐震等級の高い建売住宅は、間取りの自由度が低くなりがちな点もデメリットといえます。

耐震等級を高くするためには、建物全体のバランスが重要です。そのため、耐震壁や柱の配置など構造上の制約が増え、間取りの自由度が低くなります。

間取りの自由度と耐震性はある程度トレードオフになるため、どちらを重視するかはポイントといえます。



選択肢が限られる

耐震等級の高い建売住宅を探すとき、選択肢が限られるケースがあります。

すべての建売住宅が高い耐震等級を持っているわけではないため、特定のエリアや価格帯で探すときに選択肢が少なくなります。

また、高い耐震等級を持つ住宅は人気が高く、売り切れになることもあるため、希望する条件に合った物件を見つけるのは難しいでしょう。



耐震性の高い建売住宅を見極めるポイント

ここでは、耐震性の高い建売住宅を見極める主なポイントとして以下の6つがあります。

  • 建築工法
  • 基礎工事の方法
  • 土地の地盤
  • 建具の建て付け
  • 住宅性能評価書
  • 建築会社の強み

順番に詳しく解説していきます。



建築工法

耐震性の高い住宅を見極めるためには、使用されている建築工法に注目することが重要です。

一般的には、耐震工法として「在来工法」と「2×4工法」があります。

在来工法は、柱や梁で支える構造であり、設計の自由度が高いのが特徴です。一方、2×4工法は壁全体で家を支えるため、耐震性が高くなります。

特に、耐震等級3の基準を満たす建物は、強固な壁構造や耐力壁がしっかりと設置されているかを確認しましょう。



基礎工事の方法

基礎工事の方法も、耐震性に大きく影響します。

ベタ基礎や布基礎など、さまざまな基礎工法がありますが、耐震性を重視する場合はベタ基礎を選ぶと良いでしょう。

ベタ基礎は、建物全体を一枚のコンクリートで支えるため、地震の際に力が分散されやすく、建物の安定性が向上します。また、基礎部分に使われる鉄筋の量や配置も重要なポイントです。

基礎工事が行われているか、しっかりと確認することが大切です。



土地の地盤

耐震性の高い住宅かどうか見極めるために、土地の地盤も確認しましょう。軟弱地盤や液状化のリスクが高い土地は、地震時に大きな被害を受けるおそれがあります。

購入を検討する際には、地盤調査報告書を確認し、土地の地盤がどれほど強固かをチェックしましょう。

地盤改良工事が行われている場合は、内容も確認することが重要です。地盤がしっかりしていることで、建物全体の耐震性が向上します。



建具の建て付け

建具の建て付けは、住宅の耐震性を見極めるための重要なポイントです。

建具とは、ドアや窓、収納扉などを指します。建て付けがしっかりしているかどうかを確認することで、建物全体の構造がしっかりしているかを判断できます。

例えば、ドアや窓がスムーズに開閉できるか、隙間がないかをチェックしましょう。建物が地震時に歪むことなく耐えられるかの1つの基準になります。



住宅性能評価書

住宅性能評価書の内容を確認することも、耐震性を見極めるポイントです。特に、施工中の現場検査の評価をまとめた建設住宅性能評価書を確認することをおすすめします。

住宅性能評価書は、建物の性能を第三者機関が評価・認定するものです。評価書を持っている住宅は、耐震性を含むさまざまな性能基準を満たしていることが確認されています。

建設住宅性能評価書に耐震等級が記載されているため、購入前に確認することをおすすめします。



建築会社の強み

建築会社の強みや信頼性、実績も耐震性の高い住宅を見極めるための重要なポイントです。

例えば、ZEH住宅を得意としている会社や自然素材を得意としている会社など、建築会社によって強みがあります。耐震性を強みとしてPRしている建築会社も少なくありません。

住宅展示場やWebサイトを訪問することで、各建築会社の強みを把握できます。

また、長年の経験や技術力を持つ建築会社は、耐震性能の高い住宅を提供していることが多くあります。建築会社の過去の施工実績や顧客の評判を調べることで、その会社が信頼できるかどうかを判断できます。

また、建築会社がどのような工法を採用しているか、どのような材料を使用しているかも確認することが重要です。



建売住宅の耐震性の高さを調べる方法

ここでは、建売住宅の耐震性の高さを調べる5つの方法を紹介していきます。

  • 設計がシンプルか確認する
  • 内見で建物内の環境を確認する
  • 住宅性能評価書を確認する
  • アフターサービスの充実度を確認する
  • ホームインスペクションを実行する

順番に見ていきましょう。



設計がシンプルか確認する

耐震性の高い住宅を見極めるための方法の1つは、設計がシンプルであるかどうかを確認することです。複雑な形状の建物は、地震の揺れに対して弱くなりがちです。

正方形や長方形などのシンプルな形状の建物は、揺れに対する耐性が高い傾向にあります。また、耐力壁(建物を支える壁)がバランス良く配置されていることも重要です。

地震時の力を効率的に分散するシンプルな設計かどうかを確認しましょう。



内見で建物内の環境を確認する

内見時に建物内の環境をしっかりと確認することも、耐震性を見極めるためには重要です。

例えば、建具の建て付けとしてドアや窓がスムーズに開閉できるか確認しましょう。建物の歪みがないかを判断できます。

また、床や壁が平坦であることを確認することもおすすめです。歪みがある場合は、耐震性に問題があるおそれがあります。

内見は建物の実物を見られる貴重な機会であるため、気になる点は細かく確認しましょう。



住宅性能評価書を確認する

住宅性能評価書は、建物の耐震性を第三者機関が評価・認定したものです。性能評価項目は以下の10項目あります。

  • 構造の安定
  • 火災時の安全
  • 劣化の軽減
  • 維持管理・更新への配慮
  • 温熱環境・エネルギー消費量
  • 空気環境
  • 光・視環境
  • 音環境
  • 高齢者などへの配慮
  • 防犯

耐震性能は構造の安定の中に含まれます。耐震等級を確認すれば、建物の耐震性がわかるでしょう。



アフターサービスの充実度を確認する

アフターサービスの充実度も、建売住宅の耐震性を判断する際の重要なポイントです。信頼できる建築会社は、購入後のメンテナンスやサポートをしっかりと提供しています。

例えば、定期点検や補修サービスなどがあります。アフターサービスが充実している会社は、建物の品質に自信を持っており、耐震性に関しても高い基準を維持していると考えられます。



ホームインスペクションを実行する

ホームインスペクションを実行することも、耐震性を確認する方法の1つです。

ホームインスペクションとは、住宅の専門家が第三者的な立場から、住宅の劣化状況や不具合事象を検査することです。建物の構造や設備について詳しく調査し、問題点を洗い出します。

耐震性に関しても、基礎や壁の状態、建物全体のバランスなどをチェックすることで、購入前に安心して判断できます。ホームインスペクションを依頼することで、専門的な視点から住宅の耐震性を確認できるでしょう。



建売住宅は耐震等級の高さも考慮して選ぼう

建売住宅は注文住宅と同等の耐震性を持っています。ただし、注文住宅とは異なり建築過程を見られないため、建物の構造や耐震性に不安を感じる人は少なくありません。

耐震等級の認定を受けている住宅は第三者が耐震性を評価しているため、不安が軽減されるでしょう。

耐震性の高さを見極めるためには、書類を確認するだけではなく実際に内見して確認したり建築会社の担当者の話を聞いたりすることが重要です。

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